今日の文字盤はその大部分が金属製です。
しかし今から約90年ほど前にさかのぼると、つややかなエナメル文字盤を多数みることができました。
エナメルは金属に被せられる着色ガラスの層で、表面を保護するのはもちろん、装飾的役割も果たします。
その工程を簡単に説明しましょう。
まずガラスは摂氏1,200度で溶かされたあと、焼き入れが施されます。こうしてできた粒子が染料と一緒にミルのなかに入れられます。
つぎにエナメル技師がそれを塗る、垂らす、或いは吹きかけるなどして金属をコーティングします。
そして摂氏800~900度の特殊な窯で焼成されるのです。
この工程からもわかるように、通常の金属文字盤に比べて製造コストがはるかにかさみます。
またラッカー塗装という技法によって、エナメル文字盤と驚くほど似通った仕上げを得ることもできます。
こうした諸々の要因によって、エナメル文字盤が現今の市場から姿を消したことは明らかです。
しかし「古典のすばらしさを伝える」クロノスイスは、自身のトップモデル開発にあたって、エナメル文字盤の復興という英断を下したのです。
「美しきもの」という意をもつ「オレア」には、えもいわれぬ白色のエナメル文字盤が採用されているのです。
驚きはそれだけではありません。時計を裏返すとサファイアクリスタルごしに、"もうひとつの顔"を見ることができます。
1952年から製造が開始されたマーヴィン805をベースとした古典的な手巻きムーブメント、クロノスイス製Cal.111がそれです。
世界的なクォーツ化の波におされて1970年代以降は製造中止となっていましたが、少量ながらストックを発見。
これに徹底的なチューンアップを加えて、クロノスイスの自社ムーブメントとして甦ったのです。